Clash とは:ルールベースのプロキシクライアント

Clash は、オープンソースのプロキシルールエンジンを中心に、複数のプロトコル(Vmess、Trojan、VLESS、Shadowsocks、Hysteria2 など)を統合管理できるルールベースのプロキシクライアントです。現在の主流クライアントは Mihomo(旧 Clash Meta)内核を採用しており、従来の Clash Premium 系よりもプロトコル対応と TUN 機能が拡張されています。

一般的なワンタップ VPN アプリと異なり、Clash はサブスクリプション URLからノード一覧とルールセットを取り込み、「どのドメイン・IP をどのノードへ送るか」を細かく設計できます。国内サイトは DIRECT(直結)、海外サービスだけ PROXY 経由、といった分流(スプリットルーティング)が可能なため、長期利用では速度・安定性・柔軟性のバランスに優れます。

本ガイドの対象:Windows・macOS・Android の3プラットフォームで、代表的な GUI クライアント(Clash Verge Rev、ClashX Meta、Clash Meta for Android など)を使った導入手順を解説します。ルーター(OpenWrt)向けの全屋プロキシ設定は別記事で扱います。

プラットフォーム別クライアントの選び方

Clash 本体はコマンドラインのコア(Mihomo)であり、日常利用では各 OS 向けの GUI クライアントを選びます。公式ダウンロードページから、OS と CPU アーキテクチャに合ったファイルを取得してください。

プラットフォーム 推奨クライアント 備考
Windows 10/11 Clash Verge Rev Mihomo 対応、TUN・Merge/Override あり。現在最も更新が活発
macOS 11+ Clash Verge Rev / ClashX Meta Apple Silicon は ARM64、Intel Mac は x64 を選択
Android Clash Meta for Android / FlClash VPN 権限が必要。詳細はAndroid サブスクチュートリアル
Windows では Clash for Windows(CFW)は開発終了のため、新規導入は Clash Verge Rev または Mihomo Party を選ぶのが安全です。Verge Rev の詳細手順はClash Verge Rev 完全ガイドも併せて参照してください。

Windows・macOS のダウンロードとインストール

Windows(Clash Verge Rev)

  1. ダウンロードページから .exe インストーラー(x64 または ARM64)を取得する。
  2. インストーラーを実行し、UAC が表示されたら「はい」を選択する。
  3. 初回起動時に Windows ファイアウォールで「アクセスを許可する」を選ぶ。
  4. SmartScreen でブロックされた場合は「詳細情報」→「実行」で進める(公式配布元からのファイルであることを確認)。
  5. トレイアイコンが表示されメインウィンドウが開けば完了。

macOS(Clash Verge Rev / ClashX Meta)

  1. チップに合わせて ARM64 または x64 の .dmg をダウンロードする。
  2. DMG を開き、アプリを「アプリケーション」フォルダへドラッグする。
  3. 初回起動で Gatekeeper の警告が出たら「システム設定」→「プライバシーとセキュリティ」→「このまま開く」。
  4. TUN 利用時はネットワーク拡張の許可が求められることがあるため、画面の指示に従う。
アーキテクチャの確認:Apple Silicon Mac に x64 版を入れると Rosetta 経由で動作し、TUN や遅延テストで不具合が出やすくなります。必ず ARM64 ビルドを選んでください。

Android でのセットアップ

Android では Clash Meta for Android などが定番です。Google Play にない場合は公式ダウンロードページから APK を取得し、不明なソースのインストールを一時的に許可してからインストールします。

  1. APK をインストール後、アプリを起動する。
  2. 初回起動時にVPN 権限の許可を求められたら「OK」をタップする(Clash は VPN インターフェース経由でトラフィックを制御します)。
  3. 「プロファイル」または「Profiles」から新規作成 → URL タイプを選び、サブスクリプションリンクを貼り付けて保存する。
  4. プロファイルを選択し、右上の更新ボタンでノード一覧を取得する。
  5. 「開始」または VPN スイッチをオンにし、通知バーに VPN アイコンが表示されることを確認する。

モバイル回線では Rule モードのまま、AUTO SELECT や url-test タイプのポリシーグループを使うと、基地局移動時も比較的安定します。バッテリー消費を抑えたい場合は、不要なときは VPN をオフにする運用も有効です。

サブスクリプション(プロファイル)の追加

サブスクリプション URL は、利用する代理サービス提供者から発行される Clash 形式の設定リンクです。ノード・ルール・ポリシーグループがひとまとめになっており、これをインポートすることで Proxies 画面にノードが並びます。デスクトップ・Android いずれも基本手順は共通です。

  1. クライアントの Profiles(プロファイル)画面を開く。
  2. 新規作成 → タイプ URL を選択する。
  3. サブスクリプションリンクを貼り付ける(前後の空白・改行がないか確認)。
  4. 識別しやすい名前を付けてインポート/保存する。
  5. プロファイルを有効化し、Proxies にノードが表示されることを確認する。
  6. Auto Update を 24 時間程度の間隔で有効にし、ノード変更を自動反映する。
インポート後に Logs に「403」「404」「timeout」が出る場合、リンクの期限切れ・流量上限・URL の再発行が必要なことが多いです。ブラウザで URL を直接開き YAML が取得できるか先に確認してください。

プロキシモードとノードの選び方

プロファイルを有効化したら Proxies を開き、ポリシーグループごとにノードを選びます。日常利用で押さえるべきモードは次のとおりです。

  • Rule(ルール)モード:ドメイン・IP・GEOIP に応じて PROXY / DIRECT を自動振分。通常は Rule を推奨
  • Global(グローバル)モード:原則すべてプロキシ経由。接続テストや一時的な全経路プロキシ向け。
  • Direct モード:実質プロキシオフ。トラブル切り分け用。
モード 向いている場面 トラフィックの扱い
Rule 日常のブラウジング(推奨) ルールに従い PROXY / DIRECT を自動振分
Global 接続テスト・一時的な全プロキシ 原則すべてプロキシ経由
Direct プロキシを切りたいとき すべて直結

デスクトップでは System Proxy(システムプロキシ)をオンにすると、ブラウザなどシステムプロキシに従うアプリが Clash 経由になります。Android では VPN スイッチが同等の役割です。ノード横の遅延テストで 150 ms 以下を目安に選ぶと体感が安定しやすいです。「AUTO SELECT」や url-test グループは、定期的に最も遅延の低いノードへ切り替わります。

ルール分流の基本と Merge / Override

多くのサブスクリプションには、すでに「中国本土・ローカルは DIRECT、それ以外は PROXY」といった分流ルールが同梱されています。特定サイトだけ別ノードへ向けたい、社内ドメインを常に DIRECT にしたい場合は、Clash Verge Rev の Merge または Override で追記します。

# 例:特定ドメインを手動選択グループへ、LAN を直結
DOMAIN-SUFFIX,example.com,手动选择
IP-CIDR,192.168.0.0/16,DIRECT
IP-CIDR,10.0.0.0/8,DIRECT
DOMAIN-SUFFIX,local,DIRECT

ポリシーグループ名(上記の「手动选择」など)は、サブスクリプション内の実際の名前と完全一致させる必要があります。Proxies 画面に表示されているラベルをそのままコピーするとミスが減ります。DOMAINGEOIPMATCH などの構文を深く学ぶ場合は、ルール分流の専門記事もあわせて参照してください。

変更後は Logs で syntax error が出ていないか確認してください。YAML のインデントミスはインポート失敗の典型原因です。

TUN モードと高度な設定

システムプロキシや Android VPN だけでは、UDP を使うゲームやプロキシ設定を無視するアプリの通信を拾えません。TUN モードは仮想 NIC を作成し、TCP/UDP を含むトラフィックを Clash のルールエンジンに渡します。

  1. SettingsTUN Mode をオンにする。
  2. Windows では管理者権限、macOS ではネットワーク拡張の許可を承認する。
  3. LAN 内の NAS・プリンターへアクセスする場合は、プライベート IP レンジを DIRECT にするルールを Merge に追加する。
  4. ゲーム特化の設定(低遅延ノード選び、ポリシーグループ調整)はゲーム加速チュートリアルを参照。
注意:TUN は全通信がルールを通過します。銀行アプリや社内 VPN と同時利用する環境では競合が起きることがあるため、必要最小限の時間だけ有効にする運用も有効です。

その他の高度な設定として、DNS(fake-ip / redir-host)、プロキシチェーン、スクリプトモードなどがあります。初めての方は Rule + システムプロキシ(または Android VPN)を基本にし、必要に応じて TUN を足す段階的な構成がおすすめです。

よくある質問

Clash と VPN アプリの違いは?

Clash はサブスクリプションとルールで分流を設計するプロキシクライアントです。一般的な VPN アプリは全トラフィックを単一サーバーへ送る構成が多く、設定は簡単ですが、サイト単位の制御は Clash の方が柔軟です。

サブスクリプションがインポートできない

URL の前後空白、リンクの期限切れ、流量上限、企業ネットワークの HTTPS インスペクションを確認してください。別回線(テザリングなど)での再インポートも有効です。

すべてのノードがタイムアウトになる

Proxies で遅延テストを実行し、応答のあるノードを選び直します。全滅のときはサブスクリプション更新、ファイアウォール・セキュリティソフトによる Clash のブロック、Windows では Visual C++ Redistributable の再インストールを試してください。

Rule モードなのに一部サイトが開けない

ルール外の通信は DIRECT になります。一時的に Global で切り分けるか、Merge で対象ドメインを PROXY グループへ向けるルールを追加してください。

ブラウザ拡張やワンタップ VPN と比べ、Clash はルールで「どのアプリ・どのドメインをどのノードへ」送るかを細かく設計できる点が最大の強みです。一方、サブスクリプションとルールの理解が必要で、初期設定の手順は VPN アプリより多くなります。Windows・macOS・Android のいずれでも、Rule + 基本プロキシをマスターしたうえで TUN やカスタムルールを足していく構成が、長期利用では最も安定しやすいです。

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